企画text08
此処に眠る。

- 初会話

足跡(そくせき)



木ノ葉の里の中心区は、忍の重要施設が密集している。ヤマトは一礼して一旦本部を出ると、複雑な通路を少し歩いて今度は事務棟の階段を五階分、せっせと上った。五十間はある廊下の左右に小会合室が連なる、最上階に用があった。
崖沿いで日当たりが悪い北側の一番奥と、その次の二部屋は、第四次忍界大戦の終結後にイルカに与えられて機能を新たにしていた。一番端が準備室で、隣は忍者学校の教師を育てるための座学室となったのだ。爾後イルカの仕事場は教室を離れ、生徒も、子どもらから教師を志す忍へと変わっていた。
扉止めで九十度に保たれた戸とそこの明るさを見れば、在室であることは遠目にも容易に分かった。
「イールカさーん。」
コン、コン、コンと全開の戸を叩いて呼び掛ける。
「その声、ヤマトか。」
薄地の衝立越しに親しげな返事があって影が動き、
「おう、久しぶり。」
部屋の主が、十年来の友に笑顔を向けた。
時刻は夜の七時半を過ぎている。この日はちょうど夏至で、ついさっき日が沈んだばかりだ。

「どーもー。今日も一日お疲れさーん。」
「お疲れさん。帰郷してたのか。」
「今回も短いけどね。先輩……じゃない、火影様から伝言。」
「ああ、火影室にいたの。」
「うん、定例報告の帰り。」
「ふんヌアッ、はー……。」
イルカは関節をボキバキと鳴らし、それから肩をぐるぐる回し、終いに伸びをした。
「なあヤマト。もしかしてその言付かった内容って、俺がそろそろここから出る予定と関連してる?」
「ああ、そうかも。なんか、どうたらかんたらで、うんたらかんたらだから飯は各自で、ってさ。」
「お前の伝える気のなさ、どうなんだよマジで。わざわざどうもな。」
「二条大路にあった旧の化薬品保管庫、いま取り壊しかなんかしてるの? 責任者っぽい半泣きの設備課とごちゃごちゃやってたから、そっち方面の案件じゃないかな。『問題が片付く頃には今晩一緒に行こうって話してたお店が閉まっちゃってるかもしれないから、悪いけど外食はまた今度っていうことで、夕飯は先に済ませてて、ちなみに俺の分の気遣いは無用です』、だよ。」
「けちを付けた私が悪うございました。ご丁寧にすみません。」
「いいよ気にしてない。」
「いやすげえ気に障ってたろ、むきになって詳細述べ立てて。」
「ねえねえ、それよりさ。」
「ん。」
長いこと付き合っていると相手の口癖や仕草が自身に移ってしまうことがあるという。ヤマトは、
(今の反応の示し方、先輩にそっくりだな)と思いながら、これからの提案をした。
「僕ももういい歳だっていうのに、遣いっ走りなんかやらされて。癪じゃない? 君も。ハイそうですかって、このまま素直に帰るんじゃあさ。」
「おいおい、お前さん、悪い顔をしているぜ。」
「カカシ先輩より帰りが遅くなるくらいまで、酒盛りといこうじゃないか。」
「いいのかなあ、そんなこと企んじまって。それで本当にカカシさんのほうが先に家に着いてたら、心配させるなって後で怒られるぞ。」
電気を消しながら言い足された「お前がな」と、廊下へ踏み出すヤマトの「僕がね」が重なった。


「そういや、聞いてくれよ。」
わいわいと賑やかな居酒屋の片隅で乾杯した二人が話題にしている六代火影は、どちらにとっても身近な人物だ。イルカにとっては生涯の伴侶として、ヤマトにとっては暗い幼年の時分より人生の艱難辛苦を覗き覗かれしてきた敬愛すべき先達として。
「今日の朝、沓脱ぎ場でさ。俺が早出だったんだけど、見送るカカシさんに『いただきます』って声掛けられた。」
「プッ!」
後輩は口に含んだビールを危うく噴きだすところだった。
「完全に『いってらっしゃい』の言い方と顔でさ。俺も朝からすげえ笑ったわ。」
「面白過ぎるだろカカシ先輩。どういうことなの。」
「それがさあ、不意打ちでくるから笑っちまうんだけど、これが初めてでもねえんだよ。」

全能とまで称えられて里長に就任した男の挨拶は偶に、布団に包まれての「おやすみなさい」が「おじゃましました」になったり、帰宅人を迎えた「おかえり」が「おはよう」になったりした。本人曰く、そのつど頭の文字は〈お〉だ、ここは〈ご〉で始まる挨拶の場面だなどと考えるのだが、早く言わなければと心が急いたり、逆に気を抜いたままでいたりすると、例えば未整理の〈い〉の札箱から時間切れで間違った一枚を掴み取るみたいに選び損ねて、〈い〉で始まるほかの挨拶の言葉が口から滑り落ちてしまう。それで今朝は、「いってらっしゃい」が状況にそぐわぬ「いただきます」になったということだった。
言わんとすることは想像できても、イルカ自身には起こらない事なので共感はできない。ただカカシが不愉快になる手前でその個性的なひとときを可笑しがった。
「こういうの、食らったことない?」
「う〜ん、ないなあ。別に、どうでもいい挨拶なんか自ら進んでしたくなきゃ、しないでよかったろうし。六歳の時点で、どちらかと言えば皆からされる側だったでしょ。だから、受けた言葉をそのまま返すっていう形で慣れてたら、そもそもの挨拶の概念が受動的っていうか、……それに、僕もそうだけど、家でそういう習慣がなかったからじゃない。」
こんなふうに、ヤマトは友人に同感することもあれば、先輩と似た感覚で以ってウンウンと頷いている回もある。
「自発的な挨拶が難しいっての、僕はちょっと解かるよ。意味ないもん、それを足掛かりに始めたい用件もないなら尚更。元々の考え方はね。この歳になって、意義については認められるようにもなったけど。」
「なるほどなあ。さすがヤマト。」
イルカはしきりに感心していた。

「なんにしても、朝っぱらから楽しそうなことで。仕合わせそうでなにより。」
「いやそういうアレじゃねえから。」
「いやもう濃縮還元でソレだから。かれこれ何年? ……続いてるよねえ。そういえば、誕生日がきたらあの人、今年で四十の大台に乗るんじゃないっけ。」
「あ、それ。気軽に数字を口に出すな、特に本人の前では気を付けろよ。ほっぺを膨らませてくるぞ。」
「うっわ、悪夢だ。そんな芸ができるようになったの、あの人。」
「芸だって。言ーってやろ、言ってやろー、ほーかげ様に言ってやろー。」
「やめて下さい、本当にやめて下さい、殺されてしまいます。」
「そうだな、俺もお前には長生きして欲しい。」
「無論その気満々だとも。」
「すぐに調子乗るよなあ、ヤマトって。」
「そのしみじみ感、しまってよ。君にだけは言われたくないんだけど。長寿を希うのは至極まっとうでしょ。」
「はは、カリカリすんなよ、年輪が深くなるぞ、あ、皺か。」
卓に乗る向かいの手の近くをちょんちょんと指先で叩いてイルカがからかう。二人は同い年だ。
「皺なんかないやい、指紋だい。ていうか木遁を馬鹿にするの、やめなよね。幻の忍術だぞ。超貴重な存在なんだからね、僕は。サインあげようか。」
「うっせぇ、ばぁか。」
「馬鹿って言うほうが馬鹿なんですぅ。」
口を尖らせ、ヤマトは客の出入りする格子戸に目をやった。様々な人間が、色々な関係性の相手と暖簾を潜っている。
「……先輩、イルカさんと出逢って良かったよねえ。」
ホウ、と一息ついてぽつりと洩らした。

離れた島で大人数の客がどっと盛り上がった。
「え、ごめん、なんて?」
「カカシ先輩。昔は三十まで生きたらそれでいいって言ってたのに。それが四十路とは。」
「ああ。昔って、暗部の時代?」
「いやあ二十歳過ぎても言ってたし、感傷に任せてって意識でもないと思うけど……。」
今思えば、イルカとどうだこうだとなりだしたのを境にそんな台詞も聞かなくなったのだなとふと気付いた、ホタルイカの沖漬けをつつく箸が止まった。
「二十歳かー……んあ。俺、カカシさんと一回だけ任務が一緒になったことあったんだけど、それくらいン時かも。俺が十六、七ン時だったから。」
「へえ。初耳だ。」
「そりゃ、こんな話。」
したところで何になるんだよと肩を竦め、色よく茹で上がったサヤからぽこぽこと枝豆を口に飛ばし入れる男に、ヤマトは述懐を促した。





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木ノ葉の隠れ里を庇護下に置く火ノ国には、古来より寺が多く建つ。なかには忍僧と呼ばれる修行僧の住む忍寺というものもあるが、とある名刹の僧侶は忍ではなかった。
そこの住持が、年を追うごとに、西方から修道士を招聘したいと強く願うようになった。しかしながら寺の内部ではその意向を快く思わない門弟も多かったし、また、そんな話に応じて他国から遥かな道のりを超えて赴こうという修道士も長らく見付からなかった。
ところが、結局当初計画していた修道士ではなくなったものの、信じる教えは違えど得られる経験はあると、とうとう首を縦に振る者が現れた。北を押さえる土ノ国と南に広がる風ノ国に挟まれた小国に、その人物はいた。そこから東へ東へ、牧師は二人の供を連れ、案内役の僧に従いひたすら旅を続け、やっとの思いで火ノ国へ入国を果たしたのだった。
問題は、異教の信仰者を迎えることになった火ノ国の寺の内で発生していた。牧師来着の目途がおおよそ立ったある日、発起人である住持の文机に、「邪教徒は去れ」という脅迫状が届いていたのだ。当然そんな偏った過激な意見に屈して中止することはできない。だが、客人の身の安全は絶対に保障しなければならない。そこで、つつがない交流を叶えるため、穏便な方法で牧師を警護するという依頼が木ノ葉の里に舞い込んだ。

任務に就いたのは二小隊で、一つはイビキを隊長とするイルカと賀夜、もう一つがカカシを隊長とするモズと多須奈、合わせて六名の編成だ。
医療班の賀夜は、のちに広報部へ異動してアイドル・カヤに転身し、彼女に憧れる子どもが忍者学校に殺到した喜ばしい事件によって里にずいぶんと貢献することになる伝説の少女だ。
また、カカシの隊にも多須奈という医療班のクノ一がいた。彼女は首から下げている鎖に認識票と、信仰者の証である象徴を通していた。信仰対象は、火ノ国では少数の、牧師と同じものらしい。
モズは、諸外国の歴史文化に精通した学者肌の中年で、たいそう大人しかった。
イルカたちが知らされたところによれば、カカシは、隊長の役をイビキに任せて自分が副隊長を務めると申し出たそうだ。とはいえ、事前の任務打ち合わせの場に一度も顔を出さなかったので、まだ誰も会ったことがない。カカシとは余所で連絡を取り合っているらしかったが、実質イビキが一人で隊の全体をまとめていた。


いよいよ寺へ出立するという任務初日の早朝、カカシは十五分遅刻して集合場所の大門に姿を見せた。
「どーもー!」
その高めでやたら声を張った登場の一声に、即座に返事ができた者は誰もいなかった。仁王立ちしたイビキ隊長の巨躯はどっしりとしたまま動かず、一見するとなんら変化していないように思われた。それに彼は、怒っていてもいなくても普段から頗る強面だ。が、イルカはいち早く正確にその心理状態を読んだ、――ぶち切れている、と。

イルカには四歳離れたこの隊長に、一時的に監督者をしてもらっていたという過去がある。里に厄災があって身寄りを失くした年のことだ。お前の母上に恩義があると告げてイビキは、十三の少年を暫く部屋に住まわせた。
それからイルカは、とにかく一人でも大丈夫だということを周りに見せ付けねばと精いっぱい背伸びをし続け、十六で下忍から中忍に昇格した。そのうちに、友達と同じ速さで明日を夢見るのが辛くなり、同じ出来事を共有できなくなって、いつの間にか忍でない街の知り合いのほうが増えていった。そうして人よりちょっぴり弾けた思春期を送る彼は、たびたび警務部隊と追いかけっこをし、分署で他人の引き取り手を眺めては売れ残る果物の気分になり、反省文や奉仕作業を課せられたりして、十七になった。
十七歳当時のイルカの耳朶には、小さな痛みが伴うと噂に聞いて試しに開け始めた穴が右に三つ、左に四つあった。それは確かにじんじんしたが、行為の無意味を悟ると一年も経たずに棒の留め具を全部外した。彼が手に入れたのは、耳のコリコリした七つのしこりと、初体験は概してそういうものだということ、つまり、その前後で目覚ましい変化など起こらないという発見だった。ただ、棒を挿す穴のなかった自分だったのが、穴の空いた自分になったというだけのことだとイルカは思った。
その頃に、「あいつは、あいつの気が済んだらちゃんとするだろ」とイビキが言っていたと人づてに聞いた。そういう縁があったからこそ、イルカは、たとえイビキが生き物を眉一つ動かさずぺちゃんこにしそうな雰囲気の持ち主でも、岩石のような厳つい巨漢でも、専門技能が拷問でも、皆が怖がるほどは怖くなかった。

そんな個人的な繋がりを持つイルカが、見た目では察しにくい隊長の気配から、これはヤバいと判断したのだ。そして、この時はまだ両耳に光がポチポチ七つ付いていたやんちゃ坊主は一瞬で腹を括り、固まったその場に特攻を仕掛けた。
「若手の漫才師ですか。」
すると、
「いやあ、皆さんお揃いで。」
小声のツッコミを確実に拾った副隊長が首の角度をその若者に合わせ、今度は彼に狙いを定めて「ね」と振った。一つだけ顕わになった目が「た・す・け・て」と力んでいる。
「そりゃ、これから任務に発つんですから当たり前ですよ。」
「あ、そうね。」
もう引き返せないと、掛け合いをしながら若い中忍も副隊長にじりじり接近していった。
「貴方を待ってたんです。最後なんですよ、貴方が。」
「遅刻してゴメーンネ。」
「軽っ。」
「でも、みんな優しいから、ホラ。端から順に、怒ってない、怒ってない、……一人飛ばして、怒ってない。」
恐ろしい形相で腕組みしている隊長をすっ飛ばして、締まりのない空気の副隊長が忍たちを伸ばした手の平の先で順番に指していった。
「一番しっかり謝ったほうがいい人を飛ばしたア!」

「……、……。」
地面の一点に視線を落として、イビキが半口を開けている。その様子を見逃さなかったイルカは、これは地獄の折檻を回避できるかもしれないと思った。なぜならそれが、彼が自己制御に入って心を落ち着かせている最中の顔だということを知っていたからだ。となれば、あとは押すのみ。イルカがどうしようもない副隊長の横に並んだ。ここが頑張りどころだと勇気を振り絞る。
「だいたい貴方、どうしてこんな時間になったんです。」
「ウン、よくぞ聞いてくれた、そこだよね。こう見えて実は俺、占いは信じないけどゲンは担ぐ主義なんだ。」
「アァそうでしたそうでした、って知るか! みんな今日がアンタとの初対面だよ! ゲンなんか担いでないでさっさと来て下さい。」
「さっさと来たかったのは山山なんだけどさ、家を出たら左にしか曲がれないっていうゲン担ぎだから全然ここに辿り着けなくて。」
「なんなんだそれは、むしろよく十五分の遅れで辿り着けたな!」
「もう、グルグルよ。」
「ええい、もういい、位置に付けィッ!」
「よしきた、さあ、出発ダッ!」
「どうも、ありがとうございましたー!」
「どうも、ありがとうございましたー!」
二人は立位体前屈よろしく深いお辞儀をびしっと決めた。勢いに飲まれたモズだけがパチ……パチ……と、何度か拍手をした。賀夜は驚き顔のまましきりに目をぱちぱちさせていた。多須奈もじっとしていたが、口元に微笑みがあった。
いまいましげに大きな溜め息を吐き終わると、イビキは言った。
「カカシ。前の所でどうだったかは知らんがな、こっちにはこっちのまとまり方があるんだよ。」
カカシは、ずっと属していた暗殺戦術特殊部隊から勝手の違う正規部隊に移籍したばかりだった。
「一から覚えていくのに骨が折れるだろうが、……お前なら出来る。いいか、遅刻はするな。」
「はあい。がんばるー、ヨ。」

そう公言していたにもかかわらず、翌朝、再び旅籠からのそのそと一人遅れて集合したカカシは一切の弁解の隙もなく、イビキの怪力に思いっきり張り倒されたのだった。





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「ねえ、最後まで黙ってきいてあげたけどさ。僕、カカシ先輩のこともずっと知ってて、君ともこれだけ遊んでるんだよ。打ち合わせに参加しなかっただとか、二日目にイビキ隊長にぶっ飛ばされたってのは合ってても、漫才のくだりは創ったでしょ。」
「お粗末様。」
ヤマトは別段文句も言わず、姿勢を変えた。恥ずかしがって逃げるイルカの性格は分かっている。
「良かったですよね、その頃にどうにかなってなくて。」
「え。それは、どっちにとってだよ。」
「そりゃ、イ……あ。」
「はい、次、お前が話す番。」
「酒のせいだ。」
「そうそう。ここだけの話ってやつだ。」
「もう……。……先輩は、一部の人に嫌がられてたからさ。」
「カカシさんが?」
「禁部の人たちにね。」
「禁部……って、あの、拷問とか……。」
「尋問室もあるけど、解剖所も近いでしょ。」
里の地下には一部の関係者以外、忍でも寄り付かない施設が埋まっていて、その通路への分岐点には、「コノ先ミダリニ立入ルベカラズ」の看板が壁に掛けられている。十八歳未満立入“禁”止の“部”署を略して禁部という訳だ。
「あの人、後学のためとか言って、一時期解剖の現場に入り浸ってたんだよね。しょっちゅう見学、見学って何考えてるのか分からない暗部上がりにぼうっと立たれてたんじゃ、作業中そりゃあ邪魔ってもんでしょ。」
「また来た、って扱いが目に浮かぶわ。」
イルカは耳朶を弄りながら、新時代の里を立派に牽引している六代火影の男を想った。
カカシは一生、誰のことも愛せないのかもしれない。けれど、イルカのことは一番のお気に入りだ。イルカは、それでいいと思っている。なぜなら、自分もカカシのことを純粋に愛しているかどうか、疑問だからだ。教育学研究の臨床的な対象、実例として、興味深く見ているのかもしれないのだから。


持ち帰り用に注文しておいた焼きおにぎりと手羽先の包みを友に渡して、ヤマトは夜風に吹かれた。
「遅くなっちゃったねえ。」
「これ有難う。お前からっつって、俺が責任を持って必ず食わせてみせる。」
「ぷ。頼んだ。カカシ先輩、怒ってないかな。」
「真面目に仕事してるほうが悪い。」
「まぁた、ンなこと言って〜。僕、一緒に帰ってあげようか。」
「はは。大丈夫、大丈夫。俺は大丈夫。今度会った時にお前がいびられるだけ。」
「ふざけんなよ全く。お土産返せ。」
そうして笑いながらヤマトは、家具屋町の小路へ歩き始める。
「それじゃ、又ね。火影様に宜しく。お疲れ〜。」
「ウィ、元気でな。お休み。」
イルカも歩き出す、心持ち早足で。冷血な八方美人には諦観した人間の心音がちょうど好い。大きくまんまるな月が、カカシと暮らす家への道を淡然と照らしていた。










終.
(2016.11)
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