text19
此処に眠る。

視点:I 蛇足

果報者



――終極の一つの形として――



愈愈此の日と相成りました。
俺の生き方を、最期迄見守つて呉れてゐた人が例へば天上にでも居たとするなら其の某には、今迄の礼の代はりに云つておきたい事が一つ丈有ります。

これは、墓場迄持つて往くと決めた秘密だから口に出しては決して云ひません。
誰にも聞かせずに逝きます。
唯、胸の裡で斯うして仮にでも、己の外へ吐き出す真似事をしてみたい気分に逆らう力ももう有りはしないのですから、架空の貴方は仕方無しに聞き捨てゝ下さい。
是で本当に思ひ残す事が何も無く成るのです。
其れでは、左様なら。





  吾は全部を覚えてゐた!





  あの夜は、彼が吾を拾つたのぢやない。





  吾が、彼を。















終.
(2014.03)