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置いては往かない。
水→←栄 | 挿絵付き注意 | デートしようよ;釣りに行こう |
君と僕の恋〜アウトドアをなめるなよ、の巻〜 |
部活終わり。マフラーをクルクルと首に巻き付けながら、 「さかえぐち〜」と、同じく横で帰り支度をしている人に水谷が誘いかけた。「明後日の日曜、遊ぼうよ〜。」 けれども、苦笑を浮かべて栄口は「明後日? 急だなあ」と受けてから、既に予定のあることを詫びた。「ゴメン、釣り行くから今週は無理だ。」 水谷の持つ突発性に慣れてきたこの頃では、彼の中にある(せっかくの誘いを断って申し訳ない)という気持ちも大分と薄らいだものになっている。 「そうなんだ?!」 現に、断られた場面にそぐわぬ笑顔をぱっと咲かせるが早いか、水谷は興味津々に畳み掛けてきた。「誰と? どこに? いいな〜、俺もしてみたい〜!」 「……そっかあ。」 「え〜、誰と行くの〜?」 「……えー……。……一人で、だけど……。」 口ごもったあと、相手の好奇心(なのかなんなのか)をとても振り切れないと諦めた栄口はポツリと呟いた。 「マジで?! じゃあさじゃあさ、俺も一緒に行ってい?」 「……うーん……いいけど、オレけっこう本気で釣りするよ?」 遠回しにウェルカムではない雰囲気を醸しだす返事も、水谷は認識しつつ気に留めない。 「俺もマジやる気。」 「そう……じゃ、じゃあ……。」 「ヤッタ! あ、けど俺釣りしたことないから、……なに要るの?」 「あー……ん、と、とりあえず防寒して来ること。あと滑らない靴ね。」 人差し指から順に立てていき、必要事項を頭に浮かべる栄口。こんな時の栄口の、宙を見上げるようにキョロキョロと動く眼が水谷には可笑しく思われて、だけどほんのり可愛く思われて、そんな彼を見守るように見詰めることが好きだった。 「で、道具はオレのを使ったらいいから別に要らないかな。」 「ラジャ!」 目をキラキラさせて、この段階ですでに十分楽しそうに水谷は答えた。 「あ。」 「ん?」 「虫とか触れる?」 答えは「ハイ」だろうという予測の上で発しているような訊き方に、 「え、う、うん。多分、や、当たり前じゃん! え? 虫って、どういう系の?」 一応の確認に入る水谷がいた。 「どういう系って……まあ、ミミズ系かな? 針に刺して餌にするから。エビでもいいんだけどね。」 「……よ、余裕余裕! オトコノコだもん!」 (エビがいい!)と思いつつ、そこは虚勢を張ってみた水谷だったが、 「そう。」 と、ただ了解しただけの栄口の言葉と態度に、その勇姿はあっさりと流されていった。 「ほんじゃ、明後日ね。お疲れー。」 「あ、バイバイ! 朝起きたら電話するよさかえぐ……。」 「ち」まで辿り着くより前に部室のドアはガシャンと鳴って閉まってしまった。それでも、水谷のテンションはそんなことでは下がらなかった。 (栄口とデートだ〜、アウトドアデートだ〜! 釣りって面白いのかな〜、栄口の趣味って釣りだったのか〜、……いや趣味っていうほどしてるのか? たまたま? まあ、なんでもいいや。日曜晴れるかな〜。なに着てこっかな〜。) ――日曜日―― 水谷の願いが届いたのか、朝からひねもすいい天気になることが保証されているような青空が広がっていた。とはいえ、吐けば白い息の出る季節。いくら晴れていても、やはり空気は冷たかった。 時間は早朝。 二人の集合場所は、学校からの最寄り駅に決まっていた。 日曜日の早朝の、さほど大きくもない駅の改札口。相手を探すのに手間取ることはなかった。 が。 |
「……は、おはよ……ございま、ス……。」 (あ〜俺、けっっっこう、しくじってる? みたいな?) 水谷はどうしていいか分からない、予想だにしていなかった事態に陥り思わず敬語になってしまった。 (『釣り舐めてんの?』とかって、栄口怒らせたらどうしよう。) しかし、固まってしまっていたのは水谷だけではなかった。栄口も、水谷を見て初めて(あ、そういう……?)というダメージを受けていた。 |
「…………ゴメ、オレ……おはよ……。」 (どうしようオレ超ダサい! 水谷、こんなのと一緒に歩くの恥ずかしいよね。もう、オレのばかー! 今日はもっと軽い気持ちで来るべきだったんだよ!!) ((どうする、俺!)) 今にも泣き出しそうな顔で真っ赤になって俯き、固まる栄口。 言葉を探す水谷。 まさかの問題発生で、恋はこのまま終わってしまうのか――! 終. |
水谷NLフラグの前に打ったことを思えば感慨深いものがあります。 |
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