企画text09_2
此処に眠る。
| - | 現役火影 |
| <1. | 4.〜6.> |
| 別れ話 | |
2. 神様どうか助けて下さい。十歳を迎えるより早くにそんなことを願い、極限の果てに神様なんてものはいないという、塵と宇宙が劇しく入れ替わって生成される絶望に身を砕かれた。 「ガイ。」 「む。よう、カカシ。勝負か?」 「勝負はしない。聞きたいことがある。」 「聞こう。」 カカシは古馴染みの元へ顔を出した。 木々のまばらな高台で一人、その人は孜々として日課の鍛練に汗を流していた。 この当時の彼らは上忍であった。 「イルカって名の、忍者学校のセンセー、知ってるか。」 「イルカ。ああ、知ってる。」 カカシはこの年から上忍と併せて、引き継ぎの手続きで忍者学校教師と顔を合わせる上忍師という立場の肩書も持ち始めた。ガイのほうは、その上忍師を兼任して数年目である。齢は同じでも、この点ではガイがやや先輩であった。 「顔に横傷のある先生だろう。」 「そうそう。」 そうそう、と答えたきりカカシは口を閉じた。 修復不能な現実に際限がないという暗澹たる確からしさに蹂躙され、慢性化した虚無が巣くうみすぼらしい精神が、容れ物である肉体を冒す、この表わしがたい感覚を、何故かイルカはカカシの本質として投射してくる。そのことは、人間観が透けた相手の言葉の端々や、送る日々のなかで垣間見える人生観から察せられた。 しかもそれは、奇しくもある錯覚の作用をしてカカシを慰撫した。手放しの肯定である。見返りのからくりがごそっと抜けた、そんな刹那を蜂蜜みたく引き伸ばしたり、結晶にして見せたりするイルカは彼にとって、まるで刻の覇者であった。 ガイは、まさか以上が本題ではあるまいと思い、逆立ちを止めた。 「それがどうかしたか。」 「ああ。」 思い出したように、来訪者が尋ねた。 「どう思う。」 「どう思うって、俺に個人的な交流はないぞ。」 「好きとか嫌いとか、漠然とした印象でいーからさ。」 「ううむ。」 汚れた手をパンパンとはたきながら彼はぼやけた事情を忖度した。 「……あの先生は、教育者にかなり向いていると思う。」 それから手拭で額を拭い、首肯に促されて、 「だから火影様も教育機関に配属したんだろうが……、俺はな、カカシ。うってつけだからこそ、そういう奴は、教師はやらないほうがいいと思う。」 と、言った。 思わずカカシは意見の主に捩じ向いたものの、また眠そうな半目で古い街並みを見下ろした。トタン屋根の赤色と込み入った路地の目が、昇りつめた太陽の強い光を浴びてくっきりしている。 「理由は。」 「そうだなあ、そりゃあ、熱心な先生がいりゃ生徒は助かるだろう。しかし、ううん、奉仕の心意気と、とことんのめり込む性質を掛け合わせた性格だと、……なんて言ったもんかなあ、こう、……大変な気がする。境目が曖昧になるんじゃないかってな。いろんなものの。公と私とか、正常と異常とか、無と有とか、すっぱり割り切れるかどうかとか、とにかくいろんな、だ。だから大変ってことだ。いや、大変なだけならやり甲斐なんかを持ちだせば済むから、ちょっと違う。それを超えたところだ。そこに行けちまう奴は、見ていてハラハラするんだな。君は無駄な犠牲を払っていやしないかいって。」 そこでガイが口を山なりに曲げて肩を竦めた。「もっとも、余計なお世話と言われればそれまでの話だが。」 カカシもそれに倣い肩を少し上げた。 「あーあ。なぁんで誰とも意見の一致がみられないようなことでお前と合っちゃうのかね。まことに遺憾です。」 「ンー、だけど」と気怠く続ける彼のツンツンした銀髪が雲一つない空の下よく映える。「お前は俺が知る人間の中で、一等情の深い男だあよ。」 「はっはっ、そうか」と白い歯を見せ、永遠の好敵手を自称する男は豪快に笑った。「お前は、ええと、俺が知る中で一番……あれだな……中道を見定めようとしているな。」 褒め言葉と一緒にウインクを飛ばされた、カカシがさっとかわす真似をした。 「ガイ。お前、ゆくゆくはさ、火影に立候補したらいいんじゃない。」 「あ……あ? 今度はなんだ、藪から棒に。」 「え、順当な流れですけど。今から政治の勉強、しといたら。」 「はっはは。押しが強いな。どのみち俺は、内政に意欲を注げても外交能力がてんでないさ。俺よりも、そんなことを言ってお前こそ、うっかり火影になってるなんてこと、ないだろうな。」 「俺はね、副将向きなの。大将にゃお前さんのほうが向いてるとおもーよ。」 「お、俺のことをそんなふうに思っていてくれたのか、友よ! これぞまさしく青春まっただなか!」 「求心力のある奴を頭に置いて、その下の二番手で好き勝手やって責任は統領に取らせるのが理想かな。」 「なに。」 不撓不屈の気概の表われであるような濃い眉毛がグイッと上がる。 「お前という奴は。」 ガイは呆れ顔を作った。 「全く、仕様がない奴だ。」 「ま、そんなわけで、俺、イルカを貰うことにしたから。」 「も、貰う……?」 「一人占めすんの。先月決まった。」 「じゃ」と切り上げるが早いか、ふらっと現れたカカシは野良猫の気紛れさで姿をくらましてしまった。 「あ、おい、……どんなわけなんだ。というか、全体なんの話をしに来たんだろう、あいつ。」 そうは呟いたが、さほどの興味もないらしく、「ヨシ」と気合いを入れた彼は土を蹴り、再びピンとまっすぐに倒立した。 代々火影を継ぐ者は、その任期を終えるまで火影邸に住むというのが木ノ葉の里の習わしである。 したがって、六代火影継承が決定すると同時にカカシの火影邸への引っ越しも決まった。 すんなりいかなかったのはイルカの去就であった。当初、同じ屋根の下に入ることに、彼自身が消極的だったのである。それをカカシは説得した。 家族という形骸は要らない。人を愛したいとも思わない。また、愛されたいとも思わない。ただ、俺は貴方の生活している空間を自分が生活する場所にしたい。何かが終わったら……それは単に一日の終わりかもしれないし、暫く不在になる仕事かもしれないけれど……、貴方の元へ帰りたい。それを家族と呼ぶなら、貴方がそうだ。でも、その概念に他のものを付随させないで欲しい。生まれ落ちてしまったからには生ききる、その単純な決心に一つ、留め金があればいい。 「貴方も、強くなって下さい。」 仲が密になるにつれて言葉遣いの崩れてゆくのを四囲の人々が自然とするなら、カカシの自然は逆であった。彼の話し方は、年を追うごとに丁寧な部分がちらほら増えていった。そこに疎隔はあくまでない。イルカは十年を掛けてそんな特徴を見付けた。そして、むしろ紛う方なき親愛の証として、払われる敬意を受け取った。 いま、二人の将来の最善を思い描いてみる。いまさら他の道は考えられなかった。だから、腹を固め、従った。どう考えても恋愛感情があるだとか肉体関係があるだとかいう、口さがない取り沙汰と、下種な好奇の矢面に、正面切って立つことにしたのである。多様性が種の保存にどう関わっているのかとさえ一顧だにしない連中とは、把握し得る視野の規模に相違がある。要はその差異の問題だと、自分が捉えておればよい。 ところが、いざ意を決して火影邸で寝起きをしてみると、死にたくなるような怒りを覚えることも、悲嘆に暮れる事件も特に発生しなかった。一つには、カカシが掌中に収める最高の権威が、表立った侮辱やあからさまな誹謗を封殺するという背景があった。なんにせよ、イルカの人望は衰えることなく、暮らしに支障は出なかった。 教師の卵に指導法を授ける午後の講義を終えた彼は、自宅となった火影邸を離れる方角へ足を向けた。市場通りに用がある。三日目のカレーに載せるおかずを買うのである。 カカシが気分転換を目的に、何人前という単位も考慮せずに作った鍋一杯のそれを一昨日の日曜日、一緒に食べた。それで食べきれず、まだ余っている分がこの日のイルカの夕食であった。一昨日もカレー、昨日もカレー、今日もカレーである。 作った張本人はというと、里長の避けられぬ仕事の一つに重鎮、幹部や交渉先との会食があった。だから彼は、昨日も今日も、高級料亭で会席料理を食って帰ってくる。 イルカは、まだ残るようなら明日の献立はカレーうどんにするしかないと思いながら生鮮食品店が軒を連ねる通りを目指し、人気のない抜け道を急いだ。ぼやぼやしていたら、赤い逢魔ヶ時はみるみる紫、紺の夜陰に変わってしまう。寒空を仰ぎ、今月は俺も忘年会が最低二回は控えてる、と師走の予定表を頭に浮かべた。 角の酒屋の裏庭に植わるザクロの老木を通り過ぎる。子どもの時分に道を覚える目印にした木であった。商売っ気のない漬物屋は店仕舞いしていた。活気のある時間帯には遅れてしまったが、それでも揚げたカツやコロッケの食欲をそそる匂いがして、肉屋が近づくと鼻に入る空気もなんとなく温かく感じた。と、あちらへ行くか、こちらへ来るかという買い物客の縦の流れに慣れていたイルカの目の前に突如、横からポンとヨボヨボの老婆がよろけて現れた。 路地が開けた所で躓いたようである。その弾みで、持ち物の籐籠が落ちた。すると籠にたくさん詰められていた林檎がゴロゴロとばらまかれた。つややかな紅の玉が、そこここに転がり落ちている。イルカはびっくりして、それでも足下の一個を至極当然の所作で拾い上げた。 「お怪我はありませんか。」 「あァえェ、ありがとう。」 「あの、これ。」 「おォ、おォ。私はなんともなかったけれど、こっちには、傷が付いてしまったよ。はァ。あァ。これじゃあ、売り物には、ならないねえ。」 しわがれた声でえらくゆっくりと嘆いている。聞き取りづらいその言い終わりにひとしきりイルカが耳を傾けているあいだにも、道行く人の親切によって林檎は次々と籠へ戻されていった。 「あァえェ、おや。無傷なのが、あった。」 小刻みに震える手付きでそれを取り、老婆がイルカに差し出した。毛糸の手袋は、鶏ガラみたいな手を包んでいるのであろうか。腰の大分曲がっているうえに頭巾を目深に被っているため、顔の皺は冬の重い夕闇に目立たなかった。 「おっほほ、そうだ。お兄さんや。えェ、お兄さん。拾ってくれたお礼に、これを。ほら。貰ってくれないかえ。」 「え。いや、そんな。」 「ほっほ、大丈夫だよォ。ご覧。これは傷物になってない、ねェ。」 「そうですね。でも、ええと、お気持ちだけ、頂きます。」 「おォ、おォ、そんなことを、言わないでおくれよォ。老いさらばえた力じゃあ、これっくらいでさえ、持って帰るのも一苦労ってもんだよ。えェ、さあ、お兄さん。味は保証するよォ。」 返事を聞き終わる前に隠しから取り出した折り込み包丁をサク、サクと林檎に差し込み、老人は切り出した一切れを、有無を言わさず見せつけた。 「困ったな。」 「どうだい、ほら。」 「ううん。」 「今、味見をしてみないかえ。ねェ。」 あまりにしつこく、引き下がる様子を見せないので、イルカのほうが折れてしまった。 「そ、それでは、お言葉に甘えて一つ。有り難く、頂戴して帰りましょう。」 「マァ、マァ、是非とも味を見ておくれ。えェ、美味しい、自慢の品なんだよォ。」 そこで断りきれずに一口齧った彼は、 「甘いけど林檎らしい酸味がちょうど効いていて、いい案配ですね」と、見ず知らずの老齢の婦人にも礼を尽くし感想を述べた。 「あァ、あァ、そうだろう、えェ。私ね、この林檎で、ジャムも作ってるんだよォ。よォく、売れるのさ。まァ、ねェ、ほら、見ておくれ。」 彼は老婦の間延びしたお喋りを、口元に微笑みすら湛えて待った。それがこの男の性格である。 「ほっほほほ、味見用にねェ、ほら、えェ、紙の、匙をホラ、持っているんだよォ。」 林檎を味見した延長にある気軽さで彼は使い捨ての匙を瓶に突っ込み、掬ったジャムを口にした。 ひょんな行き掛かりでこの婆さんと立ち話を始めて、何分経ったろうか。 イルカは体にピリピリと痺れる異変を感じて、そして、とうとうその場で昏倒した。 「お下がりください!」 「イルカ!」 「いけません、火影様!」 「イルカ!」 「誰か止めて!」 「意識がないってどういうことだ!」 「今はまだ、お入りになることは出来ません!」 「どけ!」 同居人が倒れたという報せを受け、病院に駆け付けたカカシはひどく取り乱していた。数人掛かりで抑えなければならないほどの力で扉の向こうへ行こうとする。 「お通しすることはできないんです!」 「そんなもの、火影の権限で……!」 「火影様であらせられるからこそではありませんか! 里長である御身分の方に許可することは出来ません。安全が確かめられないうちに、何かあったら……。」 「だったら一秒でも早く全力で原因を突き止めろ! それからさっさと説明できる奴を出せ、今すぐに!」 「落ち着かれて下さい、幾つか判明している点はございますから。火影様はあちらへ、どうか。」 「ここでしろ、報告があるなら!」 荒げた大声が廊下に響く。これほど喚き立てる六代火影の姿は、生き残った古参の忍が見当たらない里の病院の内では、誰も目にしたことがなかった。カカシ自身、錯乱という状態に初めて陥っていた。 3. 生涯でただ一人、ずっと傍に居て欲しいと思った人間を喪失するかもしれないという衝撃は、男の理知に計り知れない負荷を掛けてその機能を一時停止に追い込んだ。 彼は乱心したことが一度もない。どんな窮地に陥っても、瞼の裏はひんやりするものであったし、とっとと頭を回転させなければ開ける血路も開けなくなってしまう。彼の育った環境では、冷静でいることが最も死なない方法であった。 年少期に直面した肉親の自決という事件においてすら、それなりに憔悴したが、取り残される心細さを拒みはしなかった。離れがたい愛着だとか、身を削がれるような気持ちが湧くといった絆に裏打ちされた父子の関係ではなかったし、その最期も裏切られたと言いたくなる形のものだったからである。 そんなふうに生きてきたから、自我の生存が脅かされていると、本能はいち早く嗅ぎ取りはしたが、どうしたらいいのか、次にやるべき行動が皆目分からなかった。やり過ごすよすががなかったカカシは処置室前で我が身に鎮静剤を打つよう医者に命じて、ようやく激昂した神経を鎮めたのであった。 入院どころか、イルカは風邪で寝込んだこともない。弱った彼をカカシは目にしたことがなかった。背中に派手な傷はあったが、それは出逢う前に負ったもので、そのことで腐った言動を取ったためしもない。詮ずるに、取り返しのつく日常において相手が臥せるという、初歩的な危機感からしてカカシは予習できていなかったのである。 なんの予感もないまま彼はこの試練に引っ立てられた。愛しい人を指してよく、体の一部だとか空気のような存在だと言う意味が、恐ろしい口をぽっかり開けてその身を飲み込もうと待ち構えている。意味があんぐりと開けて待つ口の中は、無であった。絶対的な無の引力に吸い込まれてそこへ消滅するしかない、自己の命は、その為す術のなさをただ感じるしかできないのである。 このままでは発狂する。彼はそう思った。普段ならば、イルカを失ったとしても、大事な人を喪失した自分を突き放して観察している自分がすぐに出現するのだろう、俺は根っからのいわゆる冷血漢なのだし、そもそも生きとし生けるものは必ず死ぬ、こんなふうに思っているところである。そのいつも通りの思考が固まったまんまじっとしているのは、恐怖であった。 みるみる脳裏が真っ白になってゆく。考えろ、考えろ、と意識を掻き集めて叱咤すると、「イルカが俺を置き去りにする筈がない」、「イルカだけは俺を捨てない」という訴えがして、訴えの在り処が脳の奥でゴッと火を噴きそうになり、それが心臓に達すると拳がじんわり汗ばんだ。 功徳を積んだ高僧であれ、慈愛に満ちた母親であれ、例外なくどいつもこいつも、心臓に生かされ脳に操られている動物が薄っぺらな倫理の衣を纏っている、そう見えていた。それなのに、イルカを、大切にしたい人間だと認識してしまったばかりに彼は、無の裂け目に飲み込まれそうになっていたのであった。 止むを得ず、戦場で横行していた手段に頼ってカカシは正気の息遣いを取り戻した。そうすると早速、理路整然とした判断能力で情報をまとめながら、病変ではなさそうな今回の件の対策にあたる要員を手早く確保した。これは彼の権力に拠るところが大きい。カカシは、この件に関しては立場でもなんでも、使えるものは使うと思い定めたのであった。 「火影を辞してでも会う」と現役の里長が言い張っていた最中に、簡単な検査や病室の準備が済んでいた。 それから、警務部の迅速な協力があった。果物の欠片や、その時刻の通行人はすぐには見付からなかったものの、ちょうど店先に看板を出す準備をしており、真っ赤な林檎が転がる様子と黒い外套の老婆を目にしていたという鉄板焼き屋の証言などが提出された。 それら判明したことを総合的に組み上げて、結果、イルカは仮死状態に陥っている、と診断された。 救急搬送を知らせる鉦鼓が、施設の裏手で叩かれている。真冬の夜気に響くコンコンコンコンという金属の音をカカシの耳は拾った。一晩のうちに二度、三度と叩かれる日だってある。多少体力に回復の兆しがみえるとあれに睡眠を妨害されるのだと、思い出がよぎった。 この敷地で作られた思い出は、治療や処置の激痛はともかく、どれも人に話せる類の色調を帯びていない。陰鬱であった。重くて、浅ましくて、嘘っぱちである。 廊下を帰る見舞い人たちの、「早く死ねばいいのに」、「面倒掛けられて、たまったもんじゃないわ」、「役立たず」という陰口は、白っぽい廊下の床にも壁にも天井にも吸収されずに、たまたま耳に入れてしまった少年の心にコツンと当たった。 カカシの周りの大人は利己的で、実利主義をジュクジュクと身に浸み込ませていた。彼は既に、人間とはそういうものだと思う世界に生きていた。時に同盟を結んだり、協力したりするが、それには条件が付く。根拠と、期限。この二つの電池を挿してのみ輝く安っぽい電飾のような代物が、信頼である。 少年は、毀れた言葉を粉々になるまですり潰してその辺に払い落してしまった。 いつだったかそんな話をしたら、イルカが言った。 ――心の流血も目に見えればいいのに。 自分が人を傷付けてしまうことをひどく恐れている節の彼にあることを見抜いていたカカシは、だからそんな砂糖菓子みたいな空想をするのかと思った。 ――だとしても、俺の心は大して出血しなーいよ。 その返答に、イルカは真剣な顔をした。 ――俺は、違うと思う。 いつだったろう、他人に聞かせたところで無益である昔話が、するりとこの口から零れるようになったのは。 深呼吸して頭を振り、カカシは過去より未来に意識を絞った。 -続- |
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