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此処に眠る。

- 掃除

<8.〜9. 12.〜13.>
蜜しるべ



―― (カカシの家) ――

10.

払暁ひと眠りしてから漫ろ歩きの足取りで、カカシは近所の大路へと向かった。明日行きますと宣言されて拒むに足る免罪符を即座に、自身に一つも発布出来なかった結果である。そうして重い腰を上げるには上げたが、出迎える目的の胸には依然として、義理でも履行されるのかしらんという疑問が幾分残っていた。本人が提示した刻限に、当区に辿り着こうとするならば、彼の町を日の出より前に出発しなければならぬ。普通そこまでするかと動機の信憑を訝しんでも、それが人情というものであろう。
ところが、普通の人とは擦れ違いが多いカカシにとっては、浮き世離れした人となりにこそ相手との交際に適合を感じる所以があったし、生者必滅の理に串刺しにされた言動とは親和性も高かった。
(あの人が隠し持ってる価値観は転倒しちゃってるもんねえ。)
ために、じきに判明する今日のことよりも、桜の花弁が風に舞う三ヶ月先の情景なぞという此の場と毫も関連しない由無し事で頭を満たしてしまい、目立たない葛折りの階段を下り切った所で朝日を浴びていると、約束の時間にイルカは往来からやって来た。それが背嚢を背負って、万全の装備に見える。

まるで任務に出立する恰好の彼が自宅を発った頃に時間を遡ってみると、しんとした未明の表通りに出たところでイルカは、本物の任務を全うして帰還した知人にばったり行き合っていた。
それで、中枢区の忍施設に用があるらしく同じ方面に向かう道すがらその忍から「貴殿も任務の報告か」と尋ねられて、「私はこれからです」と答えた彼は適当に会話を終わらせると足を速めて、早々に経路を変えた。しゃあしゃあと言ってのけた背が負う荷物の中身は、襤褸の雑巾や使い古しの歯ブラシであった。


「本当に来たんですね」という感想は受けが悪い。前日の批判を早速活かして、カカシは其を口には出さずにおいた。
「お早う」と無難な一声を掛けられた方は、意外そうな目をぱちくりとさせる。
「お早う御座います。珍しくないんですか、遅刻魔がこんな早朝の、時間きっかりに、既に居る光景って。」
「あー……。……今のは、聞こえなかったことにしたいんですが。それから、出来れば俺は遅刻魔でいたいのですが。」
「なんじゃ、そら。」
「道、迷わなかった?」
「ああ、はい。いえ、途中で裏道に入ったんですよ。ところが、抜けてみりゃアこれが近道で。」
「牛舎の横を通る道かな。」
「そうそう、当たりです。さてはカカシさんも、俺んちに来た時に使いましたね。それはそうと、すんなり合流できて良かったです。昨日の往生際の悪さからして、正直なところどうなることかと案じていたもので。」
そういえば此の人との待ち合わせで後から来るのは大抵自分の方であったと思い返さないでもなかったイルカはしかし、機敏な対処能力が気を回させるのか、無関心の為せる業か、何れにせよ所望に応じて話を進め、さばさばとしたテンポで本題に入った。「で、どこまで進みました。」
「う」と言葉に詰まったカカシは、慣れた石段をタツタツと踏み乍らマスクの下でぼそぼそと返した。「――まで。」
「え、どこ。」
狭い後ろをイルカが付いて上る。
「げ……玄関から、部屋の……手前までは。」
「手前って、廊下ってことですか。一晩で、廊下しか終わってないんですか?!」
「た、大変だったんだぞ、あの一部をやる丈でも! 成る可く色々とこっちにやって、足の踏み場は設けたというか……。」
「『こっちにやった』? こっちって、どっち。まさか部屋のなかに後退したんじゃないでしょうね。と云うか、どんな間取りでしたっけ。足の踏み場ってことは、それは詰まり奇麗になったという言葉からは程遠い状況なんじゃないですか。」
「ああ、もう、朝っぱらから五月蠅いなあ。」
「到着したら直ちに片付けに入りましょうね。」
「是が非でもやりたいって言うなら、俺は止めませんけど。」
「貴方も、というか貴方が、率先してやるんですよ。」
散らかした張本人は糠に釘の生欠伸で、「いいですね」と板についた窘め方をする彼を連れ、宅に戻った。



日当たりの悪い入り組んだ細道を右に折れ左に折れして着いた玄関を開けるなり、
「な、なんだ、これ。」
挑戦者は変人の住処の洗礼を受けた。
「ようこそ。どうぞお上がり」と言って足首を振り振り、つっかけを横着して手を使わずに脱ぎ捨てた部屋の主は身を屈めると、眼前に吊るされた夥しい数の衣類のかなたへ飲み込まれて仕舞った。それは、沓脱ぎに隙間なくびっしりと干された洗濯物であった。目の高さにある其等が、さながら暖簾の如く行く手を塞いでいるのである。そのあちらで、招く声がする。
「遠慮しないで、さあ。此処は昨晩、睡眠時間を返上して片付けたんですよ。のっけから足留めをくっているようでは先が思いやられますね。手付かずの本陣なんて、はは。」
「誰の所業だ、誰の。笑い事じゃないですよ。なんでまた選りに選って一番使う、出入り口になんか干してあるんです、皆目見当がつかん。」
「丁度いい案配だったんだあよ。幅が、ほら。」
沢山の洗濯物を一手に引き受けている突っ張り棒を指さし、家の主が、掻い潜って再会した客に説明した。
「この干し方では乾くものも乾きませんよ。」
一体何から取り掛かれば良いのやらという悪い予感が、溜息混じりの助言をしたイルカの胸を掠めたけれども、こんなものは未だ未だ序の口であった。

寝る間を削って片付けたという場所は、廊下と呼べるほども続かないで台所へと拡がった。
「うーわー、流し台も機能してないのか。」
全食器とおぼしき洗い物が、ごっそり蛇口の下に溜まって満杯である。「飯は外食なんかでまかなえるとして、水分は。如何やって摂っていたんです。」
「こう。」
カカシは四角の紙容器からじかに喇叭飲みする仕種をしてみせた。
「酷い暮らし振りだったんですね。」
「『泥水啜リテモ持チ堪フ可シ』の次元からすれば、生温いです。」
「『草ト恥トハ相容レヌ也』ですか。」
「最後の世代です。まあ、歳で括った同年代は、がらっと変わった方針の教育を受けていたのかもしれなーいね。」
それでも料理はしないという以前の話と一致して生ごみはなく、虫や悪臭の発生していないことが早くも奇跡と感ぜられたイルカは、この時点で先ず、事足りるとする水準が異常に低いという問題点を頭の備忘録に書きつけた。
そして、障害物に大きく阻まれることなく進めたのはここ迄であった。


序章の玄関、流し台から右手に目を移すと、開け放たれた居間らしき空間は蹉跌のどん底にあって正に悲惨の一言なのである。
「カカシさん、これ……。」
イルカは駭然とした。
右奥に折り返して寝室も繋がって在ったが、二間は、物が多くて散らかっているという範疇に留まっていられたこれまでの状態の比ではない。
「泥棒に入られてるじゃないですか!」
「はは。うちに入ったとしても、貴重品の一つも発見出来ずに空手で帰る羽目になるだろうさ。」
「なんて恐ろしい絶望感だ。」
「そうお伝えしていた筈ですよ。」
大袈裟だと笑っていた酒の肴に、誇張はなかったのである。
座布団の上のみがぽっかりと何も無い。その角形が、反対に周囲から浮いて見えている。この魔境でなら、出没するのは杖を突く隠遁の白髭仙人であっても何ら不思議がない。そこから実際は是が現れるわけかとイルカは横目で、男の端麗加減を慥かめた。
「涼しい顔をして、よくまともな生活を送っている風に装えてますね。」
「んまあ、そんなに長居しないし。今迄はね。さしたる不便もなかったんですけど。最近は里で過ごす時間が増えたから、片付くと有難いですねえ。」
「なんですか、其の物言いは。貴方も自身で片付けるんですよ。俺は飽くまで手伝いなんですから。」
「ガンバリマース。」
「クッ。」
(この人を指導された上忍師をはじめ当時の先生方の心中、御察し申し上げます。)
微塵も気持ちが籠っていない決意表明をされた現教師は、顰めた眉間に手をあてた。





11.

己はどこまで分け入りゆくのか。
終生癒える見込なく大破した心は、修復されても無傷の元には戻らない。成熟の肉付けを含む変形の有無とは違う、減速する振り子に似た芯のことである。諦めではなく、其を受け入れた時に人は遠い目をするようになるのだとイルカは思う。カカシは、そんな眼をしている。そして、恰も鬱蒼とした寒い樹海に入り込んだ様な心許無さに襲われる、彼の住処は乱雑さよりも、ともにある荒廃感に強く支配されていた。だが、心配する前に気持ちを切り替えたイルカは、明るい声を出した。
「全く。よくいままで寝食を続けられていましたね。」
「ま、ひとつの地形と見せば大したことではありません。」
「地形? 室内にそんな壮大な感覚を持ち込んで暮らしていたんですか。来て正解でしたよ今日……おっと!」
「あ、そこ、足元掬われるから気を付けて。沼、と名付けた所です。」
何かにずるりと足を滑らせたイルカは、じろりと一瞥してから立ち直り、パンパンと手を打って使い慣れた口調で注意した。
「ハーイ、注目ー。いいですかー、自分でここまでしておいて、さも自然に出来た環境であるかのような言い方をしないで下さーい。」
「居間の入口で跨いだでしょ。あすこが峠です。」
イルカが振り返ると、色んな種類の何かがごちゃごちゃと入っている山積みの箱があった。

気を取り直して彼は足下の、沼の成分を拾い上げる。
「これは、何なんですか。」
「クッション。」
「何故一種類が大量に有るんです。」
「戦利品。」
「どれだけ異色な戦地に飛ばされてたんですか! ふ、ふわふわしてました? そこの民族は矢っ張り、ふわふわしていたんですか。」
「矢っ張りって何よ。目を輝かせるな。」
「幻のふわふわ王国ではなかったか、ちぇ。」
「そんな国はアンタのふわふわした脳内にしか在りません。撞球で勝つ度に、賭けでせしめたんです。」
「全部?」
「だって撞球場の親父が捌けない景品しか賭けないんだもの。」
「温情でチャラにしてやるという発想には至らなかったんですか。」
「受け取るのが礼儀かと思いまして。欲しいなら上げる。」
「要らねえな。因みにカカシさんが賭けた物って?」
「そう易易と教える訳にはいきませんねえ。」
「あっそう、じゃ結構です。無駄口叩いてないで始めましょうか。あと、駄目なところを名所ふうに扱わないで下さいね。真顔で平手打ちしますよ。」
「……。」
異議ありげな上忍の目を、中忍は取り合わなかった。
斯うして沼の成分は解明されたものの、兎に角ざっと見てあれはクッション、これは工具などと識別し切れる限度を超えている。この段階では悉くがゴチャゴチャした〈何か〉なのであった。

「さて。カカシさん、掃除用具を拝借しても宜しいですか。箒とか、塵取りとか。」
「ああ、いいとも。」
玄関の突当りにあった小部屋から自慢顔で出てくると、
「箒くらいうちにも有るんだよ」と家の主は其を差し出した。重力に逆らって跳ねる彼のボサボサ頭と同類の癖が付いてしまっている箒の先を見たイルカは、低学年の掃除用具入れを思い出した。柄の先端ではなく掃く方を下にして立てるから形が潰れるのである。そう小言を用意して受け取った、箒は床にトンと下ろした瞬間にバンと爆発する勢いで壊れて仕舞った。
「嘘だあ!」
劣化した竹の柄は縦に割れ、掃く部分はひしゃげて、塵を集めるどころか動かせば動かす程それ自体がどんどん散り散りになってゆく。
叫んだイルカは、三筋向こうで営まれていると云う金物屋へ、開店と同時に掃除道具一式を調達しに走った。前途は多難である。





12.

「御帰り。」
「只今とか悠長に交わし合っている場合じゃないんですよ。時間がありません。」
遠路をてくてく歩き続けたかと思えば一息つける間もなく買い出しに走り、丸一日釈迦力になって動いても到底片付きそうにない実況のあらましを検分して猶、イルカはめげずに「おっし」と腕捲りした。その気概に、彼が来てから未だ一度も働く意欲をみせていないカカシは驚いた。
「まだ心が折れてないの?」
「わやをおっしゃる、今日はこの為に来たんですよ。挫けたらやる事が無くなっちまうじゃないですか。さ、カカシさん。始めましょう。」
そう言って、イルカは倒れた本棚のまわりに散乱している書物をひょいと拾い上げた。
持ち主は面倒臭そうに頭を掻いた。

「これは、表紙が余所に埋もれているんでしょうか。」
彼が手にした一冊には書皮も、元々付いていた表紙も無い。屈むと、辺りの書物はどれもこれも丸裸である。
「ん、付いてない分に関してはもう有りませんよ。ぴらぴらすると邪魔だからひっぺがすんです。俺の本には必要ない。」
「……然様ですか。で、手始めに、カカシ先生は何をします?」
なにせ物の洪水で床が全然見えていないのである。彼らはどこからでも取り掛かることが出来た。
「え、アア。ええと、そうね、折角だから、じゃあ……お構いなく。」
「では、カカシ先生は寝台の上から物をどかすこと。」
「……はあい。」
「あ、下に落とすのは禁止です。燃える物と燃えない物を、二つの袋に分けて下さい。」
「ええ、注文が多いな。」
「俺は目に付く空き缶、空き瓶と、書籍類を集めて回ります。」
聞く耳を持たないイルカは、くるっとそびらを向けた。


ざっくりした分別と回収の作業に入った彼は、二、三の空き缶を拾ったところで不図顔をあげた。
「そういやア俺、ここで一回、厄介になってるんですよねえ。」
見渡した部屋はぐちゃぐちゃである。
「……。」
互いに名乗り合うよりも先に、ぐでんぐでんな酔いどれをカカシが此所へ運びこんでいた。そして、手痛い夜を乗り越えていた。
「こんな部屋だっけなあ。」
「アー、あの時の介抱は、本当に大変だったなあ。」
「何時まで言い続ける気ですか。」
「死ぬまで言い続けてやるって今決めたよ、何でそっちがそんな態度になれるのかね。大体アンタが持ち出してきた話題じゃないの。」
「あ。」
「……。」
若干きつくなった相手の視線に気付いたイルカは、
「あ、いいえ」と遅蒔き乍ら不用意から自重へと転向したが、
「なに。」
「いやあ、はは……。」
愛想笑いで誤魔化せないと解っているから、ハアと一呼吸おいた後で、言ってしまった。「あの頃は片付けて呉れる人がいたんだっけなあ、なんて……。」
結極喫茶店でははぐらかされて、「はい」か「いいえ」かの答えを聞き出しそびれていた。
「ハイハイそうですよ何か文句でもあるんですか、書皮の掛かっていない物が既読で掛かっている物は未読なのでそれで分けといて。」
乙に絡まれたイルカは心の半分で「あーあ、果せる哉、御冠」と思い、残りの半分で「俺、此の人の鋒鋩の吹雪が好きなんだよなあ」と思っていた。

過去の恋愛遍歴には毛ほどの興味も無い。それにも拘らずイルカは、カカシを刺激する代価としてならあざとくも女女しくなれた。破滅への水先案内を側面に持つあの感情が他でもないカカシから引き出せるのであれば、ややこしい主題でさえ方便に用いることをも視野にいれる。赤の他人には差し出せる誠意を、大切にしたい相手に与えず傷つける彼は、自分を嫌な人間だと思う。
公園で語らった日にカカシが腹から笑う声を聴いた、イルカは仕合わせであった。だから乳くさい欲求が尚更優しさを灼く。やり過ぎるといずれ心底嫌われるという自粛なら利いた。が、改心する気は、いまの彼にはなかった。
ともあれほとぼりが沈静するよう口を動かすのは止め、せっせと手を動かして謹慎した。


カカシは、あの頃のイルカの恋人を知っていた。
あの頃と云うのは、印象的な譬え話をする声を初めて耳にし、任務の受付所で顔を見て人物が個になった時から、此の部屋で悪夢に等しい一夜を明かす間に、彼の心像を形成してゆく事柄にぽつぽつと触れていた時期のことである。小耳に挟んだ当時の恋人の名は、自分が暗殺戦術特殊部隊に在籍していた時代に数年間組んでいた小隊の一員のものであった。しかも、集まった小間切れの情報はすっきり一本の線上に並ばなかった。
探られて痛い腹をもっているのは、果たして何方か。
(イルカ先生は、俺の過去が気になるのかな。)
どこまでが本気であるのか、好戦的な駆け引きの相手をし乍らカカシは量り兼ねていた。



「あれ、この小説。さっき見たぞ。」
「ああ。その辺にあるのは俺じゃなくて……サクモ上忍の蔵書だったやつです。」
息子が本棚に与り知らぬ二列目が潜んでいるのを発見したのは、活字中毒になって大分経ってからのことであった。
「趣味が被ってて嫌になる。二つあっても仕方ないし、古い方は要らないです。」
「え、でも……。」
「アア、なら、代わります。俺が其の一帯を整理します。」
「了解。そうだ、俺、部屋よりも先に水回りの掃除をしてきます。食う寝るってえ、暮らすのに必須の要所を回復させることを最優先とします。」
「あーい。」
「しゃきっとした返事にして下さい。」
それで、イルカは幾つものコップが沈む、流しの前に立った。衛生面を点検しつつ、持参した粉入りの瓶を背嚢から選り取り、振り掛けてはテキパキ洗ってゆく。自炊していなければ油汚れも殆どない。焜炉掃除は、食器の消毒時間中に簡単に終わった。

「カカシさーん!」
事件は、洗い物が一通り済んで目に入った、水切の脇の冷蔵庫を序でに開けてみた時に起こった。
「カカシ先生ー! 来て下さい、玉……、来て、早く、玉子が!」
「玉子がなんなのよ。」
カカシはごみ袋をがさがさと鳴らし、奥まった寝室から大股で出てきた。
「冷蔵庫の、玉子。」
「冷蔵庫に玉子なんて有りました?」
「すっからかんの景色に一個だけ残ってたもんで、取ってみたら、なんだか軽くて……カラカラ鳴るんですけど……。」
「どういうこと。」
「こっちが聞きてえよ。」
顔のこわばりが解けぬイルカがおののく手で、玉子を怖々と振る。と、中でカラカラと乾いた音がするのである。
「ははははは!」
「笑うなあ!」
カカシは腹を抱えて大笑いした。彼が澄まして居られない原因には、いつだってイルカが一枚噛んでいた。
「ど、な、如何なっているんでしょうか、中身……。ああ、駄目だ、倫理的に割れねえ、……捨てましょう!」
「ええ、でも、気にならない? 割っちゃおうか。」
「駄目です。嫌です。断固反対。断然拒否。割ったら俺は即帰ります!」
「ハイハイ、分かったあよ。そんならポイッとしちゃって下さいな。」
「うう。信じられねえよ。玉子って放置したら、こんなことになんのかよ。」
何度目かの衝撃を受けたイルカであったが、彼に課せられた試練の山場はここではなかった。










-続-
13.〜14.>